2026年6月29日
生成AIをよく使う人ほど、その答えを信じている。そう考えるのが自然かもしれません。ところが、実際の声は少し違いました。
「鵜呑みにしない」「出典を確認する」「最後は自分で判断する」。そう話しながら、献立や旅行、仕事、人間関係の悩みには日常的に使っています。
リビングWebの投票コンテンツ「あなたはどっち?」で、「生成AI、日常で使ってる?それはどんな風に?」と聞いたところ、189人が回答。「よく使う」が50.8%、「ほぼ使わないかな…」が49.2%と、結果はほぼ半分に分かれました。
ただ、75件のコメントから見えてきたのは、利用者と非利用者のはっきりした境界ではありません。生活者は、AIに何を任せ、どこから自分で確かめるのか。その線引きを、すでに自分なりに始めています。
生成AIは、全面的に信用されなくても使われる
「よく使う」と答えた人からも、回答をそのまま受け取らないという声が寄せられました。
通常、サービスを継続して使うには、一定の信頼が必要です。しかし、生成AIは少し違います。文章のたたき台を作る。考えを整理する。選択肢を出してもらう。こうした使い方なら、答えが唯一の正解でなくても役に立ちます。一方、「ほぼ使わないかな…」と答えた人の中にも、必要なときだけ使う人がいました。
使う人と使わない人が分かれているというより、用途によって使い分けられている。生成AIとの付き合い方は、「使うか、使わないか」から、「何を、どこまで任せるか」に移っているようです。
情報を探すだけでなく、次に何をするかまで整える
今回のコメントで目立ったのは、大きな決断をAIに任せる使い方ではありません。献立を組み立てる。旅行の行程を作る。メールを整える。悩みを言葉にする。生活者が任せているのは、最終判断そのものよりも、その前に発生する細かな作業です。
ここで求められているのは、共感や情報提供だけではありません。気持ちや条件を整理し、「次に何をするか」まで落とし込む。その過程をAIが手伝っています。
レシピを見つけるだけなら、検索でもできます。しかし、家にある食材を整理し、献立を組み、翌日の買い物まで考えるには、いくつもの判断が必要です。
生成AIが引き受け始めたのは、判断そのものではなく、判断に至るまでの手間なのではないでしょうか。
変わり始めているのは、検索方法よりも、情報を得てから決めるまでの時間です。
一般的な質問が、自分の条件を加えた瞬間に変わる
生成AIをよく使う人のコメントには、具体的な条件が書かれていました。
冷蔵庫に何があるのか。誰と旅行するのか。年齢はいくつか。何が好きなのか。植物は今、どのような状態なのか。そうした条件を加えることで、一般的な情報が「自分の場合はどうか」という答えに変わります。
生成AIが定着する人は、AIの機能に詳しい人というよりも、自分なりの問いを見つけた人なのかもしれません。一度うまくいくと、使い道も広がります。
年賀状作りから、ゴミの分別へ。利用を広げたのは、AIの高度な機能ではなく、「自分の役に立った」という最初の体験でした。
商品やサービスを探す前の、曖昧な悩みが表に出る
生成AIには、健康、仕事、お金、育児、人間関係など、人には相談しにくい内容も持ち込まれています。
相手に気を使わず、初歩的なことでも何度でも聞ける。話がまとまっていなくても、とりあえず言葉にできる。そうした気軽さが、これまで検索や問い合わせには表れにくかった悩みを引き出しています。
生活者の需要は、商品名やサービス名が決まってから生まれるとは限りません。「何となく困っている」「自分が対象なのか分からない」「誰に聞けばよいか分からない」。その段階にも、企業やサービスとの接点はあります。
ここからは、今回のコメントを情報発信の側から考えてみます
生活者がAIに条件を伝え、候補を整理するようになると、商品やサービスを選ぶまでの流れも変わっていきます。公式サイトを見る前にAIへ相談する。公式サイトで見た情報をAIに渡し、自分に合うか整理してもらう。今後は、企業が発信する情報が、人に直接読まれるだけでなく、AIによって要約・比較される場面も増えていくと考えられます。そのときに重要なのは、情報量の多さではありません。
こうした判断材料が曖昧だと、AIにも生活者にも比較しづらくなります。一方で、生活者はAIだけですべてを決めているわけではありません。
AIで候補を整理し、最後は公式情報で確かめる。生成AIが広がるほど、正確で、比較しやすく、更新された一次情報の価値は高まります。
「便利です」「高機能です」と説明するだけでは、自分との接点は見えにくいものです。どのような状況で、どのような困り事を減らせるのか。利用場面が具体的であるほど、自分事として伝わりやすくなります。
商品説明に加えて、比較表、診断、利用例、チェックリストなどがあると、生活者は次の行動に進みやすくなります。詳しく伝えることよりも、判断しやすくすることが重要です。
料金、条件、対象者、注意点、申込方法。AIで整理した後に確認できる公式情報がなければ、生活者は最終判断ができません。AI活用が広がるほど、一次情報の正確さと分かりやすさが問われます。
今回の投票では、「よく使う」と「ほぼ使わないかな…」が、ほぼ半分に分かれました。しかし、コメントから見えてきたのは、利用者と非利用者のはっきりした境界ではありません。
よく使う人もAIを疑い、ほぼ使わない人も、必要なときにはAIを開いています。AIが入り込んでいるのは、最終的に購入や申し込みを決める瞬間よりも、その少し前です。
迷いを言葉にする。条件を整理する。候補を比べる。次に何をするかを考える。
広告を見た瞬間や、Webサイトを訪れた瞬間だけでは見えない「判断前の時間」に、生成AIは入り始めています。これからの情報発信で見るべきなのは、「AIを使う人は誰か」だけではありません。
人は、どのような瞬間にAIを使うのか。
そこに目を向けることで、生活者が本当に必要としている情報や、まだ表に出ていない迷いが見えてきそうです。
最新のマーケティングデータをお届けする「サンケイリビングNews」はメールマガジン形式で毎月1回、主婦、働く女性を中心に、消費の主役である女性の「今」をお伝えします!お申し込みは以下からお願いします
サンケイリビングNews申し込み
関連TAG