サンケイリビング新聞社が発行するメディア総合サイト「アドラボラトリー」

  • ホーム >
  • マーケティングデータ >
  • 344件の“行ってよかった!”に見る、体験型イベントが人を動かす構造――大阪・関西万博の来場者コメント分析から読み解くプロモーションのヒント

マーケティングデータ

344件の“行ってよかった!”に見る、体験型イベントが人を動かす構造――大阪・関西万博の来場者コメント分析から読み解くプロモーションのヒント



 2025年10月13日に閉幕した「大阪・関西万博」。開催前は反対意見や建設の遅れが話題となりましたが、結果として来場者数は約2,558万人に達し、大規模な「リアル体験イベント」として成功を収めました。
リビングWebでは閉幕直前の10月9日〜15日に「大阪・関西万博、行った?」というアンケートを実施。「行った!」は44.7%、「行く予定なし」は54.5%。実際に万博に行った人の344件のコメントには、「行ってよかった」「また行きたい」といった熱量の高い感想が多く寄せられました。
 

調査概要:対象=全国のリビングWeb読者/方法=Webアンケート/時期=2025年10月9日〜10月15日/投票数=803/有効コメント数=344

 

読者の実際のコメントをもとに、「なぜ人々は万博に心を動かされたのか」「どうして複数回訪れる人が続出したのか」を分析し、今後のイベント・観光・ブランド体験型プロモーションに応用できる“生活者インサイト”と“販促設計のヒント”を探りました。

 

1|来場意欲を高めたのは「世界観への没入」と「非日常の疑似旅行感」

来場者が最初に語るのは、「刺激」「世界観」「非日常」。コメントには以下のような声が多く見られました。

  • 「海外の国や日本の企業、プロデューサーのパビリオンはもちろん、建物や景色、新しい技術など何を見ても刺激がたくさんでとても楽しかった。夜景も美しく、大屋根リングは本当に素晴らしかった」(015さん/43歳/女性)

  • 「マレーシア館では自然と野生動物の魅力を知り、ベトナム館では水上人形劇を見ることができ、旅行気分が味わえる万博ならではの経験だった」(あやこさん/55歳/女性)

  • 「世界旅行をしたような充実感でした。まったく知識のない国だったトルクメニスタンの映像の没入感がすばらしく、料理も美味しくていつか行きたい国になりました」(aiさん/39歳/女性)

 

生活者インサイト

  • 「知らない世界に出会いたい」という欲求
  • 「海外旅行に行かずとも非日常を体験したい」という代替価値
  • 「映像+空間構成による没入」が“現地感”を生む

 

プロモーションのヒント

  • 没入感の高い「世界観体験」を提供できるブランドは、感情価値を獲得しやすい
  • 旅行・飲料・エンタメ領域では、「擬似旅行性」「異文化要素」を演出に組み込む

 

2|リピート率の高さは「体験が変化する期待感」と「推し的回遊性」によるもの

複数回の来場者が目立ったのも万博の特徴でした。中には17回通ったという人もいます。

  • 「否定的情報に騙されたけど、通期パス購入して17回行きました。最新映像の美しさ、空飛ぶクルマの実現性、イタリアの博物館に感激し、チェコビールやモナコのワインバーを楽しみました」(のりさん/63歳/男性)
  • 「2回目にイタリア館5時間待ちで不完全燃焼となり、結局4回行きました」(たにこさん/61歳/女性)

 

生活者インサイト

  • 「コンプリート欲求(収集型行動)」
  • 「リベンジ消費(体験未完了による再訪)」
  • 「人に話したくなる→また行く→さらに発信」という循環

 

プロモーションのヒント

  • 「体験が変わる」イベントやキャンペーンは再訪・複数接触を設計できる
  • 「回遊型」「シリーズ更新型」「推し別導線」がブランド滞在時間を伸ばす

 

3|「五感×推し×学び」で感情価値が高まり、記憶に残る体験になる

多くのコメントが「感動」を伴って語られましたが、その背景には「視覚」「触覚」「味覚」「学び」「憧れ」が複合的に作用しています。

  • 「ヨルダンは素足で砂の上を歩けるのですが、その砂が日本では体験したことのない感じのすごく気持ちいい砂で、家のお庭にあったらなぁーって思っちゃいました。」(大阪最高!さん/56歳/女性)
  • 「イタリア館はこんな間近で貴重な美術品が地元で見られて感激だし、ガンダム館は自分がその世界に没入できてガンダム好きには楽しすぎた。」(美優さん/63歳/女性)

 

生活者インサイト

  • 「体の感覚を伴う体験」は記憶定着率が高い
  • 「推し(ガンダム・ミャクミャクなど)」が没入を促す
  • 「知識+体験型コンテンツ」は共有価値が高い

 

プロモーションのヒント

  • 「触れる」「動かす」など体験型設計は“記憶に残るブランド体験”を実現
  • 教育・観光・ブランド博物館系プロモーションにも応用可能

 

4|「グルメ体験」は“語りたくなる共有軸”となりSNS発信を誘発

来場者の多くが、「パビリオンの体験」とともに「食の記憶」を強く語っています。特に「現地風」「珍しい」「並んでも食べたい」などの要素が来場者の熱を高めていました。

  • 「ドイツビール、30分並んで買って飲みましたがおいしかったです」(sabeeさん/65歳)
  • 「日頃はお目にかかることがない世界のグルメを堪能しました。チェコのビール、シャンパン好きのイギリスで作られたスパークリングワイン。ベルギーレストランではワッフルの地域の違いを理解することができました」(ただの酒呑みさん/55歳)
  • 「パビリオンかと思って並んでいたらカタールのレストランで、リッチなランチをいただいたことも良い思い出です」(コアラさん/36歳)

 

生活者インサイト

  • 食体験は「感情の上書き」ではなく「体験の定着」を促進
  • 「並ぶ価値があるもの」=「語る価値があるもの」
  • “世界の食”は「旅行妄想」を刺激し、次の行動意欲に波及

 

プロモーションのヒント

  • 飲食を絡めたイベント体験は拡散導線と相性が良い
  • 「食×ブランドストーリー」の組み合わせはSNS発信のトリガーになる

 

5|子連れ・家族連れの再訪理由は「年齢で異なる感動ポイントが存在する」から

「家族で2回行った」「子どものために再訪」といった声も目立ちました。

  • 「九州からお盆に家族で。楽しすぎて9月に息子2人と仕事と学校を休んで2日連続で行ってきました!民族の雰囲気や文化の多様性を感じ、交流も楽しい!」(まるまるさん/43歳)
  • 「子どもを連れて万博に行ってきました。広い会場とたくさんの展示に、子どもも大人もワクワクしっぱなしでした!特に体験型のコーナーでは子どもの興味がぐんと広がり、親としても嬉しかったです」(こひままさん/37歳)

 

生活者インサイト

  • 大人は「刺激・学び」/子どもは「遊び・発見」
  • 「親子共通の成功体験」→「再訪の正当化」
  • 「教育的成果」や「思い出づくり」も再訪の動機に

 

プロモーションのヒント

  • 「年齢別に異なる価値軸」を設計することで再訪率が上がる
  • ファミリー向けキャンペーンでは「親子の成長物語」を鍵に据える

 

6|マーケティングへの応用:「没入→共感→回遊→再訪→共有」の導線設計が鍵

アンケートコメントの傾向から、「人が体験型イベントで感情を高め、行動を繰り返す流れ」は以下の構造に整理できます。

 

フェーズ 心理反応     万博における例  プロモーション応用
没入    「行きたい」  海外パビリオンの世界観   テーマ性の高いコンテンツ設計
共感    「推しが見つかる」  ガンダム館/イタリア美術   ファン軸導線/ペルソナ別体験
回遊    「もっと見たい」  各国を回る収集行動  回遊マップ/シリーズ展開
再訪    「次はあれに行きたい」  複数回訪問  限定更新/会期変化
共有    「語りたい・載せたい」  食・写真・学び  SNS投稿導線/UGC化

 

まとめ:熱量の高い体験は「世界観×回遊性×再会欲」でつくられる

大阪・関西万博に関する生活者コメントを分析すると、参加者が再訪し、他人にすすめるほどの熱量は、
①非日常の世界観
②回遊による“体験収集”
③再訪し続けたくなる愛着

という3つの要素で構成されていました。これらはリアルイベントに限らず、観光プロモーション、モール販促、ブランド体験キャンペーン、ミュージアム型展示、オンラインフェスなど、さまざまな施策に応用可能です。今後の販促企画立案では、「商品を見せる」のではなく「体験したくなる世界を設計する」視点がより重要になるといえるでしょう。

 
リビングWeb「あなたはどっち」


最新のマーケティングデータをお届けする「サンケイリビングNews」はメールマガジン形式で毎月1回、主婦、働く女性を中心に、消費の主役である女性の「今」をお伝えします!お申し込みは以下からお願いします。
サンケイリビングNews申し込み

関連TAG


マーケティングデータ 一覧へ

このページトップへ

↑ PAGE TOP